日本探偵小説全集「大下宇陀児、角田喜久雄集」 創元推理文庫ISBN:4488400035

前に、「石の下の記録」を読んで大下宇陀児の「虚像」も読んでみたい! と思ったために買ってしまった一冊。 角田喜久雄の方はまだ全然、読んでないので大下宇陀児のみの感想になってしまいますが、個人的にベストは「情獄」です。主人公が犯した犯罪について、友人に宛てた手紙の中で告白する話ですが、少しずつ明らかにされる主人公の心情や犯罪を読み進めてゆく内に、物語に引きずり込まれてゆく感覚というのを久しぶりに味わうことができました。何でしょうね。文章のリズムが心地良いというか、薀蓄が出てきても読まされるという感じがしないというのか。
「虚像」「凧」「悪女」「悪党元一」と、どの作品も主人公のちょっとした悪意や勘違いといったものから起こる悲劇で、主人公に思わず感情移入してしまい、「烙印」も読みたいなぁ、と思う今日この頃です。だけど、その前に角田喜久雄をちゃんと読まにゃ。