戸梶圭太「なぎら☆ツイスター」角川書店 ISBN:4048733044

ミステリ界のボブ・サップ。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの戸梶圭太ですが、激安野郎ってフレーズは良いですね。
戸梶を初めて読んだとき「この世には安い動機の犯罪しかない」という言葉には目から鱗が落ちました。イロモノ扱いされがちな戸梶ですが、個人的には現代を代表する社会派の作家ではないかと勝手に思っています。まあ、そんなことを思ってるのは僕だけかもしれませんが。(←何か偉そうだな)
前置きが長くなりましたが、この本では都会のやくざ二人組みが田舎へ行き、田舎のやくざと起こす騒動の数々が実にバカバカしく、激安野郎のバーゲンセールなんじゃないかと思えるほど、安い(戸梶曰く)人間がわんさか出てきます。本人たちが真面目であれば真面目であるほど、可笑しな話になるのはやはり出てくる人間の安さからでしょうか。ただし、安さの中にも人間の本質みたいなものを突いている部分があるので、トカジ作品はついつい読んでしまう気がします。また、トカジ作品の中ではめずらしく本書はミステリ的な仕掛けが出てくるので、一応ミステリの範疇に入る作品なのではないでしょうか。
作中において、都会のやくざ、桜井の愛読書である「真剣師 小池重明」(ISBN:4877284591)というのが出てきますが、真剣師とはプロではないのに賭け将棋を生業とする人のことで、小池重明という人は実在した人物だそうです。以前、この本を読んだことがあり、実在した人物のようなので色々と言うのは控えますが、なるほど、この人はいかにも戸梶が好きそうな(そのままトカジ作品にでてきそうな)人物という気がします。