泡坂妻夫「妖女のねむり」 ハルキ文庫 ISBN:4894565099

自分は泡坂妻夫の本が大好きなんですが、その中でもこの「妖女のねむり」は長編の中では一番好きかも知れません。あくまでも今まで読んできた泡坂作品の中でではありますが。
読後に世界がひっくり返ってしまう「しあわせの書」も凄い作品だと思いましたが、こちらの「妖女のねむり」も読後感では負けていないように感じます。
輪廻転生がテーマになっていますが、前半部分だけを読んだら幻想小説なのではないかと勘違いしてしまうのではないでしょうか? 前半部分で次から次へと現われる謎の数々では、どう考えても主人公は、ヒロインが前世に付き合っていたという恋人の生まれ変わりである、としか思えないほどに偶然が重なるのですが、後半部分でそれらの偶然としか思えない謎の一つ一つが実は偶然ではなく、必然であったことが次々と解明され、やがて一つの真相へと収束してゆく様は、圧巻の一言です。
「広げた風呂敷ってのはなぁ、こうやって畳むんだよ」と某御大の中の人に言ってやりたい気持ちで一杯になりますが、それはまた別の話であり、関係ないのでやめておくことにします。