阿刀田高 Aサイズ殺人事件 ISBN:4167278022

阿刀田高の本はホラーのような奇妙な話が好きで、図書館へ行くとたくさん置いてあったので、高校時代よく読んでいました。こういうジャンルを「奇妙な味」というのは最近知ったことですが。
阿刀田高は、そういった「奇妙な味」の本しか書いていないのではないかと勝手に勘違いしていたのですが、こんな正統派の安楽椅子探偵ものを書いているとは知りませんでした。自分もそんなに詳しい訳ではなく、安楽椅子探偵ものと言えば「黒後家蜘蛛の会」シリーズ(ISBN:4488167012)のヘンリー位しか知らないのですが・・・。
本書は迷宮入りしそうな事件を抱えた佐村刑事が、碁打ち仲間である方丈和尚にそれとなく「こんな事件がありまして」と事件の内容を囲碁の対局中に話すと、方丈和尚が「これこれを調べて下さい」と刑事に頼み、後日の対局中に事件の真相を解いてしまうのですが、その質問の内容がまさしく禅問答。「ブラジャーのサイズは?」とか「麻雀の一番強い人は?」とか事件に全く関係なさそうなことばかりを佐村刑事に調べてもらいます。そして、それらの一見なんの関係もなさそうな手掛かりから真相を導き出してしまうのです。
佐村刑事と方丈和尚のやりとりも面白いのですが、度々囲碁の対局場面が出てきて推理が冴えるほどに着手が鋭くなるという点も面白いです。囲碁用語が出てくるので、囲碁を知っている方なら、より楽しめること請け合いですが、そうでない方も十分に楽しめる本なのではないでしょうか?
「久々に碁会所にでも行ってみるかな」と思わせてくれる好短編集でした。