十三角関係 名探偵篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈2〉ISBN:4334731228

 山田風太郎の小説にでてくる人物って、いちいち格好が良いんだけど荊木歓喜先生にゃあホレちゃうね! モジャモジャ頭に大兵肥満、ち〇ばで足をがっくり、がっくり引きずってる上、頬にはでっかい三日月傷。おまけに、ダンサーや売春婦の産んじゃあならない子の堕胎手術を引き受けてる。そんな人物、普通道端で会ったらまず逃げるけど、この荊木歓喜先生は本当にカッコイイ!

「他人さまの素性あらい、他人さまの悪の詮索――だいッ嫌えなオッチョコチョイをまんまと俺にやらせたってことよ――あのモヒ中の女せえいなかったら、知らん顔してやるんだが、進退両難、その罰があたって――見ろ、な、な、泣けるじゃァねえか!」(チンプン館の殺人)

他人の詮議が大っ嫌いな歓喜先生は人情のために、泣く泣く探偵となって犯罪を暴く。そのかわり、被害者が殺されても仕方ないような人物だった場合、犯人やトリックを指摘しながらも見逃してしまう。本書はそんな名探偵、荊木歓喜先生の活躍が存分に見ることができる一冊じゃないでしょうか。また中篇「十三角関係」は本格ミステリーの傑作として名高い「妖異金瓶梅」(ISBN:4331605213)や「明治断頭台」(ISBN:4480033475)に勝るとも劣らない作品ではないかと思います。
凄いぜ! 荊木歓喜先生!