都筑道夫「ちみどろ砂絵」

 なめくじ長屋に住む面々、これはどれもこれも大道芸人だが、雨の降る日は外へ出て芸をする事が出来ぬために大の男が揃いも揃ってごろごろしている。そんなところから「なめくじ長屋」と呼ばれているが、長屋の面々が不思議な謎や事件を持ち込むと、砂絵描きのセンセーは大道芸人たちを手足に使い、名推理で事件を見事に解決してゆく。なめくじ長屋シリーズ第一作の短編集。

 名探偵である砂絵のセンセーは、長屋の面々が持ち込む謎を、ときには金になりそうだから、ときには人情のために、ときにはやむを得ず事件に巻き込まれてしまうため解決します。トリックや推理の筋道が江戸時代ならではという点が面白いですが、必ずしもハッピーエンドではなく、その時代の倫理観に基づいた、ある意味厳しい終わり方をしている話が多いのも興味深いです。
 捕物帖というジャンルはあまり読みなれていないこともあり、敬遠していたのですが、城昌幸の「若さま侍捕物手帖」と本作を読んだ限りでは、最近の新本格ものに比べると、ある意味ハッキリ名探偵が描かれている分、ミステリ好きが安心して読めるのではないかな、と思うようになってきました。全部が全部そうではないとは思いますが。