皆川博子「薔薇の血を流して」

 異邦の地で数奇な運命に巻き込まれてゆく女性達の物語。皆川博子初期傑作集。
 以前読んだ「鳥少年」に収録された「火焔樹の下で」のように、看護婦と女医の胸の内に秘められた、ある患者に対する燃え盛るような気持ちに、狂気とは紙一重の美しさを感じる、といったことも同作品集に収録された「密室遊戯」のように眩暈を伴うような強烈なまでの幻視体験というものも本作では味わえなかった。
 それでも流麗な文章に切り取られた作品からは上質な香りが漂っている。
 本作はミステリというよりはサスペンスの部類に入ると思うが、やはりそんな瑣末ことはどうでも良いか、という気分になる一冊でした。