乙一「ZOO」

 「きみとボク派」の定義がよくわかりませんが、乙一の作品は「きみとボクの心の距離感」を描くのが上手いなー、といつも感心してしまいます。特殊な設定や装置を使って、きみとボクの心の距離を縮めたり、離したり、時には「あざと過ぎない?」と思う作品もないことはないですが、やはり好きな作家です。
 せつない話もホラーな話も根っこの部分は一緒で、心が通い合ったり、すれ違ったりすると切ない話になって、心が閉ざされたり、相手に全く通じなかったりすることでホラーな話になるような気がします。個人的にはホラーな作品の方が好きですけど。
 本書は本人の「僕の右端と左端がつまってます」の言葉通り、乙一という作家を知るには最適な一冊ではないかと感じました。「乙一作品のどれから読んだら良い?」と聞かれたら「ZOOから読むと良いよ」とお奨めしたいと思います。