「姉貴も大変だね」

 ―― 夫との音信が不通になって1ヶ月が経過した。
 私が実家に帰ってきて最初の1週間は、家族も近所の人も同情的で暖かい言葉をかけてくれていた。しかし、1週間も過ぎると周りもいい年した出戻りの女が毎日家に篭っている状況を、表面上は同情していても陰では蔑むようになった。私はそのことを薄々感じとると、いたたまれない気持ちになり、鬱々とした感情が膨らんでゆき、自分に嫌気がさすようになってきた。おまけに母親もそろそろ私が鬱陶しくなってきたのか、
「あの人も悪気があった訳じゃないんでしょ。 あなたが素直になってあやまれば、やり直せるんじゃないの」
と言い出す始末である。
「うるせえバカ!」
と私は声を大にして言いたい。
 あの男が私にした仕打ちは決して許される類いのものではない。しかも、妻が実家に帰ってきたというのに、追って来ないばかりか、全く連絡をよこさないというのは一体どういう神経をしているのだろうか。妻が実家でどのような状況に陥っているのか、少し頭を働かせてみればすぐにでもわかるものであろうが、そこがあの男の駄目なところなのだろう。
 おお神よ。美人でつつましやかな私が何故このような仕打ちを受けるのでしょう。
 おい、ダンナ。今ならダイヤの指輪で許してやる。だから早く迎えに来い。