嘘日記

以前、友人たちと近所の河原へとバーベキューをしに行った。 みんなが準備をしている間、ぶらぶらしながらその辺に落ちている石を拾ってみると、その石の大きすぎず小さすぎず手にしっくり馴染む感じや、角度によっていろんな表情を見せる表面の具合が悪くな…

MYSCONへ来ると桶屋が儲かる(安)

「MYSCON、と言われましてまず頭に浮かぶのは、ミステリを趣味に嗜む紳士淑女の社交場というよりも、正直なところを申し上げますと「少し濃い方達」の集まりというイメージがどうしても先行してしまいます。私のように海外古典を全く読んでいない、また国内…

百円ライターで煙草に火をつけるとき、火力を誤って前髪を焼いてしまうことがあります。チリ、チリ……、とタンパク質の焦げる臭いというのは、どうしてあんなにも不快なのでしょうね。高名なるアンポンタン・ポカン教授の学説によると、細胞はそれひとつひと…

「僕の眼鏡を知りませんか?」 ――君の額に乗っかっているのは何なのだろうね? という言葉が喉まで出かかったのだが、僕は彼の憂いの帯びた、どこかあどけなさの残る顔を見て、ほんの少しの間だけ彼を騙してみることにした。 「さあ、見なかったけど、どこか…

山田悠介「リアル鬼ごっこ」

括目せよ! 山田悠介がミステリ界、いや文壇に革命を起こすのを! 乱歩の怪奇、久作の妖美、風太郎のエンターテイメント、泡坂のトリック、連城の文章力! それら全てを兼ね備え、凌駕し、奇跡的なバランスにおいて同時に成立させる腕力、筆力。独創的でSF読…

通学のため、いつものように駅へ行くと、ホームに人の姿が見当たりません。発車時刻になっても電車がやってくる気配が見えないので、駅員に今日はどうしてしまったのかを訪ねてみることにしました。 ――電車が来ないのですが、今日は何か事故でもありましたか…

懲りずに頭の体操(クイズですって奥さん)

「先輩、囲碁やってるんですよね?」 「やってるけど、何だ?」 「ヒカルの碁あるじゃないですか、やっぱ本因坊とか名人とか目指していたんですか?」 「バカ。全然、住んでる世界が違うよ。・・・そうだ、お前がこの間、出したクイズさー、アレ穴があったぞ…

頭の体操(クイズなり)

「先輩、先輩」 「何?」 「俺、こないだ合コン行ってきたんですよ」 「何だよ。俺も誘えっつーの。それで、どした?」 「まあ、男と女、4対4の合コンでしてね。中々盛り上がりましたよ」 「ふーん。悔しくなんかないね・・・」 「またまたー。それでですね…

――親愛なるK君。 昨年の暮れに徹マンをして以来、君とは会っていないが、いかがお過ごしだろうか? 僕は現在、己のミステリ好きのために浅学で無知蒙昧たるミステリの感想文をウェブ日記上で書き連ねている。普段の僕を熟知した君ならば、この日記を一目見よ…

妻との連絡が途絶えて1ヶ月が経過した。 妻が実家へ帰った当初、私は久しぶりに癇癪持ちの妻から逃れられた開放感から独身貴族を気取り、悠々自適の生活を送っていた。部下にその事を尋ねられると、 「どうせすぐにごめんなさいと謝ってくるさ。一人暮らしは…

「姉貴も大変だね」

―― 夫との音信が不通になって1ヶ月が経過した。 私が実家に帰ってきて最初の1週間は、家族も近所の人も同情的で暖かい言葉をかけてくれていた。しかし、1週間も過ぎると周りもいい年した出戻りの女が毎日家に篭っている状況を、表面上は同情していても陰では…

――そう、あれは出来心。ほんの出来心だったので御座います。 私は、現在巷を賑わせております件の「陰摩羅鬼の瑕」なるものを一目見ようと思い立ち、駅前にある書店へと足を向けたので御座います。 書店へ入りまして、文庫、ノベルスコーナーへ赴くと、果た…

聞いた話

「よく電車の中で、一点を見つめながら、何かブツブツ喋っているおじさんがいるじゃないですか」 「ああ、たまに見かけるよね」 「俺は、今まで3回くらい見たことがあるですけどね、同じ人なんですが」 「ああいう人は何を喋っているんだろうね」 「俺も何喋…

今日の会話

「先輩、俺、こないだ事故の瞬間見ちゃったんですよ」 「へぇ、俺は事故の瞬間って見たことないけど。それでどんな感じ?」 「俺は助手席に座っていて、当たった瞬間は見てはいないんですが、どうやらトラックと原付がぶつかったようなんです。 「先日、ドラ…