――親愛なるK君。
 昨年の暮れに徹マンをして以来、君とは会っていないが、いかがお過ごしだろうか?
 僕は現在、己のミステリ好きのために浅学で無知蒙昧たるミステリの感想文をウェブ日記上で書き連ねている。普段の僕を熟知した君ならば、この日記を一目見ようものなら「へっ!何気取ってやがんだ!」とでも言うところであろうが、僕がこうして、ミステリの感想文という名の愚にもつかぬ駄文をつらつらと書き連ねているのは、自分がこう思っている、こういう作品が好きなのである、という点を書いてゆくことで、自分の考えを形として残してゆきたいという点にある。しかし、賢明なるK君ならばすでに推察していることと思うが、そんなものは建前というものであり、このような駄文を不特定多数に向けて公開しているということは、ある種の歪んだ虚栄心を満たしたいからなのかもしれない。
 さて、こうして君に向けて手紙を書いているのも、これらの鬱屈した僕の内面を吐露するためではなく、現在、僕がある非常に困った事態に陥っているためである。
 僕が非常に人見知りであり、プライドだけは高く、その割に打たれ弱いことは僕の事をよく知っている君ならばわかっていることと思うが、先日、あるサイトのトピックが非常に面白そうであったために、日記上でリンクを張ってみたのであるが、逆に僕の脆弱で無味乾燥としたサイトに、その有力なサイトからリンクを張られるという思いがけない事態が起こってしまったのだ。そのために、この日記へと訪れる人が一日にして倍以上に増えてしまい、嬉しいと思う反面、非常に困惑もしている。
 どうせなら、そのトピックにあったように、リンクを張った以上は読書感想文を書いてみれば良いのだろうが、僕のように浅学の上に文章力が無い人間が読書感想文を書いたところで、果たして人に見せられるに値するような文章が書けるのかどうか、甚だ怪しいものである。
 また、先に述べたようにプライドだけは高いのだが、その実、打たれ弱いという点が僕という人間の本質である。「ごちゃごちゃ言ってないで書けば?」と快活明朗たるK君ならば言うのかもしれないが、さて、一体どうしたものか、自分の優柔不断さがつくづく嫌になるのだが、是非ともK君に意見を求む次第である。