山田風太郎「天国荘奇譚」ISBN:4331605426

 ・・・食事中の方は極力読むのを控えて下さい。
 内容を説明するだけでもう、気分が悪くなる人が出てくるかもしれませんが、一応内容を説明しますと、

山陰地方の旧制中学で事件は起きた。寄宿舎・青雲寮の天井裏に「天国荘」と名づけた遊び部屋を作りたむろする悪童4人組は、教師への糞便攻撃の作戦を練り実行に移す。彼らの奇想天外なアイデアと抱腹絶倒のユーモアあふれた事件の裏には、時代の空疎な権威に対する反逆の意味が込められて…。

 もうね、手を変え品を変えて、教師へ怒涛の糞便攻撃を仕掛けます。そのアイデアが実に面白いんですよね。教師が恋心を寄せている女性や寄宿舎に寄り付く謎の怪人(悪く言ってしまうとル○ペン)を上手く使って、ある時はおびき寄せ、ある時はだまし討ちで教師達に次々と糞便攻撃を仕掛けます。あらゆる物を使うアイデアもさることながら、無駄なプロットが全く無いのも凄いです。まあ、汚い話ではあるけれどもホロリとさせられるところもありますし、主人公達の考え方や、さらりと書かれるその後の運命といった山田風太郎の死生観のようなものなども凄く好きです。
 自分は廣済堂版の文庫で読んだのですが、他にも「ドンファン怪談」や「童貞試験」や「臨時ニュースを申し上げます」なども非常に面白かったのです。
 時代背景や設定の生かし方が凄く上手い作家だなと改めて感心した一冊でした。