日影丈吉「夕潮」ISBN:4488407013

 仁科秘女自選歌集・夕潮―高校生のころ異色の閨秀歌人に非常な感銘を受けた鹿沼未知は、時を経て後ればせの新婚旅行に訪れた伊豆の島で、当の詠み人に巡りあう。心惹かれるままに、親友瑠璃子の謎めいた死や夫の不自然な素振りなど、島へ来てからの屈託を吐露する未知。その歌人と夫を海辺で見た、あの光景は…。

 主人公未知の情緒的で鬱々とした心情を延々と読まされるのは苦痛と感じてしまいました。何でしょう、月明かりしかない道を2時間くらいかけて、とぼとぼ歩いて帰るような閉塞感のようなものでしょうか。違うな、BGMに波の音しかないモノクロ映画を観ているような感じでしょうか。読んでいて場面を想像する時に白黒になるというか。・・・うーん、上手く纏まらないんですが、こういう話は苦手と言うことだけは確かです。作中に短歌が度々出て来るので、短歌を嗜む方が本作品を読んだらまた感じ方が違うとは思うのですが・・・。
 解説を見てみると、本作は「幻影城」に2回に分けて掲載されるはずだったのですが、2回目の時に「幻影城」が廃刊になってしまったために幻の作品だったのが、最近になってようやく完結した形で出版されたということで、資料的にも価値の高い作品という面もあるようです。
 もう少し年を重ねてから読み直してみたいな、と感じた一冊でした。