戸梶圭太「ギャングスタードライブ」 ISBN:4344404467

 相変わらずスピード感とグルーブ感は最高です。
 戸梶の何が好きかって、作品に登場するやくざと激安女が好きなんですよね。
 本作だとアーミーおたくのやくざが大藪春彦の本のセリフに感化されて「おおっ、こいつは確かにカッコイイぜ!」とのたまったり、走り屋のやくざが普段無口なくせにカーチェイスになったら俄然燃えるとことか。「なぎら☆ツイスター」だったら都会やくざの桜井が風俗嬢に将棋を挑むとことか、桜井の舎弟が田舎やくざの事務所で、そこの下っ端と一緒にファミコンやってるとことか。激安女だと、「二十八歳の事情」*1に登場するうだつの上がらないOLとか「ニ種族激突」*2に出てくるヤンキー女が最高。
 基本的に登場人物はどいつもこいつもエゴの塊で、人間の醜い部分をとことんまで描写しており、そいつらみんなエゴ丸出しで行動するから事態がどんどん悪い方へ向かってゆくというところは戸梶作品全般に言えるような気もしますが、本作のような初期の部類に入る作品の方が最近の作品よりも評価が高いように見受けられますし、自分も最近読んだ「燃えよ刑務所」(ISBN:4575234672)よりは内容はハチャメチャながら、わかり易くて楽しめました。
 「トカジよ。作品を次々発表するのも良いけど、このころ作風を思い出してくれ!」と、何だか偉そうだけど、思わず言いたくなる一冊でした。

*1:トカジノフ収録

*2:同じくトカジノフISBN:4048733842