デイヴィッド・イーリイ「ヨットクラブ」

 中には全くオチの意味がわからない作品もありましたが、皮肉たっぷりでニヤリとするような話や、最後にゾッとするような話などブラックユーモアたっぷりの短編集でした。
 中篇の「タイムアウト」は核爆発により、イギリスとアイルランド全体の人間、建物および自然が一瞬のうちにすべて蒸発してしまい、事故とはいえ加害者であるアメリカとロシアが力を合わせ、他国にそのことを一切知られずにイギリス全土を完全復興させようとする話ですが、これが特に面白かったです。細かいところを考えると、突っ込みどころがあるような気もしますが、いかにして一国の「空白期間の歴史」を創るかという過程がとても面白いです。
 阿刀田高のような奇妙な味の作品が好きな方にはお薦めです。