以前、友人たちと近所の河原へとバーベキューをしに行った。
 みんなが準備をしている間、ぶらぶらしながらその辺に落ちている石を拾ってみると、その石の大きすぎず小さすぎず手にしっくり馴染む感じや、角度によっていろんな表情を見せる表面の具合が悪くない。とても気に入って手のひらでころころ遊ばせてみたり、軽く放ったりしていると「おーい」と友人に呼ばれた。バーベキューの準備が終わったようだ。石の処遇をどうしようかしばらく考えたけれどやっぱりポケットに入れようとしたら、突然自分の意思とは関係なく腕が振り上げられた。何が起こっているのかわからないまま呆けていると、勝手に石を持った腕が振り下ろされた。石は凄いスピードで親友Yの顔のすぐ横をかすめながら後ろの草むらの中へ飛んでいった。Yが蒼白になった顔をこちらに向けている。それまで騒いでいた他の友人たちも静まりこんでしまった。
 それからというもの、なんとなく友人たちとの間に溝ができてしまい、Yとは全くしゃべらないようになってしまった。一度、友人の一人に「あれは腕が勝手にうごいたんだ」ともらしたことがあるが、友人は軽蔑するような表情をしてその場を去っていった。
 時々林の中に入って手ごろな石を見つけると拾ってみるが、やっぱり自分の意思とは関係なく投げてしまう。石たちはこうやってほかの動物を使いながら林の中を移動をしているんだな、と思ったけれど、どうせ誰にも信じてもらえないだろうし、証明することもできないから黙っていることにした。
 今ではその辺に落ちている石をむやみに拾わないことにしている。