ロバート・J・ソウヤー「ゴールデン・フリース」

 宇宙船の全てを管理するAIの視点から描かれたSF倒叙ミステリ。
 AIイアソンが犯人かつ語り手という設定が面白いです。冒頭で乗組員の一人を事故に見せかけて殺害するのですが、宇宙船バサード・ラム・ジェットにおいては探偵役を生かすも殺すもイアソン次第という不利な状況の中で探偵役の主人公が徐々にイアソンを追い詰めてゆく場面が手に汗握ります。また、イアソンが乗組員を何故殺害したのか、動機を探り当ててゆくのですが、最後の最後に驚愕の真相が明らかにされたとき、これでは殺人を犯しても仕方ないかも、と不覚にも思ってしまいました。
 しかし、冗談を言ったり、お茶目な一面を見せたりするイアソンはAIとは思えませんね。ただ、主人公のトラウマを持ち出して攻撃する冷酷さも兼ね備えてますが。
 SFだけどミステリ好きな方にお薦めしたい一冊でした。