高橋克彦編「十の物語」

 山田風太郎都筑道夫夢野久作など、名前を聞いただけで「これは読むしかないだろう!」と思わせる作家たちの恐い話を集めた短編集。
 上記の作家の短編が読んだことが無いものばかりなので良かったのですが、兎にも角にも香山滋の「月ぞ悪魔」が素晴らしいです! 僕の中では、このアンソロジーの中ではありますが頭一つ抜けてます。香山滋の作品はちくま文庫の「香山滋集」で初めて読みましたが、冒険小説がこんなに面白いものか、ということを教えてくれた意味では久生十蘭と並んで好きです。三一書房から全集が出ているようですが、古書店で値段を調べたら・・・うん、あと10年くらいしたら買おうかな、という値段でした。現代教養文庫の傑作選を調べたら・・・社会思想社が倒産しており、新刊での入手は不可能、ということでなかなかお目にかかれなさそうで非常に残念です。
 アンソロジーなのに香山滋のことしか話してませんが、山田風太郎の「人間華」、都筑道夫の「狐火の湯」、柴田錬三郎の「赤い鼻緒の下駄」も良かったす。何か付け足しただけのようでかなりおざなりになってしまいましたが、それだけ香山滋の作品に心奪われてしまったので仕方が無いと言い訳をしておきます。
 とにかく読みたい読みたい香山滋の作品が読みたいぞ! と思わせてくれる一冊でした。